2023/06/07
「あ、鈴仙」
「うす」
「……またそれですか」
「……またこれよ美味しいから」
いつもの甘味処でキャロットケーキを食べている鈴仙が居ました。
いつも席をご一緒してるので今日もしました。
前回喧嘩してそのままのちょっと気まずい感じでもです。*1
「あんたのは?」
「栗きんとんです。前回今泉さんにほとんど食べられてしまったので」
「ああ……」
「……」
気まずいです。
そんな瞬間、ふっと風が頬をよぎりました。
「参上」
「わ、能力咲夜だ」
「町中で平気で使うわね」
「ね、ねえ、ふ、ふふ。け、喧嘩してるんだって?」
それはもうものすごいニヤニヤでした。
こんなにニヤニヤしている咲夜は初めて見るくらいのニヤニヤです。
「うわあ悪い笑顔。これは性格の悪い笑顔ですよ鈴仙」
「もっぐもぐもぐ、もぐもぐごくん」
「もしかして喧嘩している私達を肴に団子食べてるのこの子?」
「あ、私に遠慮せずに喧嘩して?」
「もうみなまで言っちゃいましたよ」
「本当に性格悪いわねこいつ」
きっと今泉さんに聞いたのでしょう。
対応が正反対です。
「意地でも仲良くなってやりたくなりました」
「あ、まさかそういうのが狙いか」
「何のことやら」
「妖夢、こいつの術中にハマっちゃ駄目よ。仲悪いままにしましょう」
「私は今どんな提案をさせられてるんです?」
「やんややんや」
「いや別に何もやってないから」
「鈴仙、キャロットケーキください。栗きんとん甘すぎます」
「いいけど交換だからね交換」
なんかどうでも良くなっていつもの女子会の感じになりました。
あとで鈴仙から聞きましたが、もしかしたら咲夜は自分が悪者になることで私達を仲直りさせたかったのではとのことでした。
……いや、あの邪悪な笑顔はきっと本心です。
咲夜はそういう人です。
*1 2023/06/02