2024/11/08
部屋で本を読んでいる時のことです。
誰かが足音をころして近づいてくる気配がしました。
フミタさんがお仕事をサボってくるにしては慎重すぎます。
「こんこん、妖夢さんいますか」
「その声はナコさんですか。どうぞ」
「失礼しますね」
現れたのはナコさんです。
私の部屋に来るなんてとてもめずらしいです。
真面目な雰囲気に少し圧倒されます。
「お忙しいところすみません、少しお時間を」
「は、はい」
「あのですね」
「ごくり」
「幽々子様の冬の新作のお着物で相談が。こちらとこちらの布どちらが幽々子様的に好みでしょうか……どうしたんです?」
「いえ、ちょっと気が抜けて」
なんかお説教でも始まる感じだったので拍子抜けでした。
「うーん、だいだいとむらさきですか。むらさきの方が冬っぽくて良いんじゃいないんでしょうか」
「ありがとうございます。でもそうじゃなくて、幽々子様的にどちらがっていうのが知りたいんです」
「ナコさんが選ぶものなら幽々子様どちらでも喜びますよ」
「そんなうふふ嬉しんですけど!」
「喜びと怒りが一緒にくるとこんな表情になるんですね」
「おやつ持ってきたので真剣に考えて下さい」
「そうとなったら」
本気を出します。
だっておやつがかかっているんですから。
本日のおやつ
・内緒の栗まんじゅう
「すごく真剣に考えました」
「はい」
「幽々子様は里の夏祭りでベビーカステラが好きなのですが、毎回買うと飽きて違うのを求めます」
「ほう」
「ですからだいだいです。冬の寒い時期だから落ち着いた色だなんて常識は幽々子様は好きじゃないはずです。冬だからこそ暖かい色を纏いたい場合もあります」
「……」
「それにきっと、幽々子様の冬の服装を思い返してみてもだいだいはなかったように思います。だから今回はだいだいにしましょう!」
「妖夢さんに聞いてもらって良かったです。ほら栗まんじゅうもっと上げます」
「わあ栗まんじゅう!」
一度に食べきれないほどもらいましたので、後輩の部屋に行くときのお土産にしましょう。
真剣に頭を使ったので疲れました。
日記を書き終わったらもう一個栗まんじゅうを食べましょう。
良いことをしたあとは気持ちが良いです。